私は、毎月「致知」という雑誌を購読しています。
購読していると言っても、大変難しい雑誌でもあるため全部は読み切れませんが、最新号に「松下幸之助師匠の教え」という記事があり、大変感動したので抜粋して紹介します。
私が松下電器に入社したのは、いまから79年前の1937年のことでした。
以来、1981年に退職するまで、6年の戦争期間を挟んで44年間、松下幸之助師匠から直接ご指導を賜る機会に恵まれ、幸福な人生を送らせていただきました。とはいえ、私が松下師匠と本当の意味での出逢いを果たしたのは、入社後20年ほど経った1960年。松下師匠と定年退職した上司のやり取りを耳にしたのがきっかけでした。
その上司は定年退職の挨拶に伺った際に、松下師匠から次のような言葉をいただいたというのです。
『風雪に耐え抜き、波浪と闘って幾十年。自らの努めを全うして解体される船。それから料理屋の看板になる船縁の板。そういう人生が大事やで』
昔は釣り船などの板が、解体後に料理屋の看板として使われることがよくありました。おそらく松下師匠は朽ち果てるまで働いてもなお、看板として役立つような人生を送ってほしいと激励したかったのでしょう。
また、別の上司も退職の際に「これから大いに余生を楽しむつもりです」と挨拶に伺ったところ、松下師匠に「余った人生なんて、きみ、あるんか?」と切り返されたと言います。私はそのやり取りを知って非常に感銘を受け、「経営や仕事の方法を教えてくれる経営者はたくさんいるけれども、人生を教えてくれる経営者はこの人だけや。これは弟子としてついていくべきだ」と決意したのです。
私は、この文章を読んでハッとさせられました。私も歳を重ね退職する上司のような心境になることもありますが、余生などと言うことを考えている場合でないと思いました。それと同時に、仕事だけでなく人生の師に出会うことの大切さを再認識しました。
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